日本とアメリカの二重国籍で亡くなった方の相続 | 豊中遺産相続サポートオフィス
相談時の状況
被相続人は、日本国籍で渡米後に米国籍を取得、そのことを役所に報告することなく、二重国籍のまま米国内で死亡した。相続人は日本語の全く分からない米国人の息子がひとり。
その相続人から、現地の法律事務所を通じて、当方に次のような依頼があった。
父が亡くなってからすでに20年以上経過するが、最近、亡くなった母より、亡父が、日本国内の田舎に土地を持っているという話しを聞いた。
亡母も詳細は把握しておらず、出身地はわかるものの、連絡を取り合える親族もない。いちど調査をしていただいて、必要があれば相続手続を行ってほしい。
当事務所のサポート内容と顛末
被相続人の出身地である、九州のとある市町村にて不動産の名寄帳を取得。
すると、被相続人名義の不動産がいくつか残っていることが明らかとなった。
それを元に戸籍の取得にも成功。何と戸籍上は、被相続人は、まだ生きていることになっていた。
土地の所在地を訪れて近所をくまなく聴取して回ったところ、隣町に遠縁の親族が暮らしていることがわかり、訪問して事情をお話しする。土地については、かなりの過疎地であり、売却を打診したご親族、近隣住民の全員から、無償でもいらないと言われた。
記録によると、土地に関して毎年いくらかの固定資産税が支払われており、調査を進めた結果、現地に相続人名義の預金口座が残っていて、そこから自動的に毎年固定資産税が引き落とされていることが明らかとなった。
以上を含め、調査によって判明した事情を依頼人に報告したところ、不動産については放置しておいて、預金だけ相続手続を行ってほしいということになった。
不動産を放置されると、現地の役所や近隣住民が困ることになるため、費用がかかってでも処理すべきであると助言したが、依頼人からは、費用をかけるつもりはないとの返答。
結局は、預金の相続手続のみをして本件を終えることとなった。
司法書士からのコメント
本件の不動産に関しては、誰かがいつか困ることになるでしょう。
しかしながら、事実上、海外で暮らす外国人を追っかけていくことは、ほとんど不可能です。
まして、相続登記を終えていなければ、もうお手上げと言っても過言ではありません。
名義人が外国で暮らす場合は、納税管理人の届出を司法書士の責任とし、不動産の相続登記を義務化することも、一案であることを示唆する案件であったように思います。
相続登記を放置しておられる方は、速やかなお手続きを!