20年前に亡くなった父名義の不動産の相続登記
状況
ご依頼人は、吹田市在住の男性。
20年前に亡くなった父名義のマンションを名義変更したいとのご依頼。父が亡くなった時、当該マンションはご依頼人が相続するという内容の遺産分割協議書を見よう見まねで作成し、
相続人全員(ご依頼人、母、弟の3人)の署名押印をきちんともらってはいたものの、
相続に関する戸籍謄本や遺産分割協議時の印鑑証明書など、名義変更手続に必要な書類は一切持ち合わせていませんでした。
ご提案
遺産分割協議書に添付する印鑑証明書を改めて取得していただく必要がありましたが、
弟さんは仕事の都合で住所を転々としており、遺産分割協議当時の住所からは相当な変遷があるとのことでした。
書類の保存期間の問題から、住所の沿革を付けることはほぼ不可能であると考えられたことから、お母さまと弟さんに改めて署名押印をもらうことは可能かと尋ねたところ、それは可能であるとの回答であったため、当方にて遺産分割協議書を作成し直して、無事名義変更を行うことができました。
当事務所からのコメント
遺産分割協議書があるから、簡単に名義変更できるでしょうというのは、間違いです。
登記手続上、協議書には実印による押印と印鑑証明書が必要になります。
今回の例のように、遺産分割協議当時の住所と現在の住所(印鑑証明書上の住所)が異なる場合は、住所のつながりを証明しなければなりませんが、時間が経過しているとそれが困難となるケースもあります。
今回は、たまたま署名押印をもらい直すことができましたが、例えば、お母さまが認知症を患っていて署名押印することができない、あるいは、弟さんとの関係が悪くなってしまっていて、署名押印をもらい直せる状況にないといった場合には、たちまち手詰まりになってしまいます。
もちろん、成年後見人を選任したり、裁判に訴えるという方法も無いわけではありませんが、いずれにせよ、相当な手間と時間とお金がかかってしまうのが実情です。
相続の話し合いが調った場合は、安易に放置したりせず、できるときに速やかに名義変更を済ませておくことをお勧めします。